風力発電には「洋上風力」と呼ばれるものがあります。初めて聞く方が多いかもしれませんが、日本では需要電力の10倍ほどの容量を発電可能と考えられているほどです。
ここでは高い潜在能力が期待される「洋上風力」についてご紹介。日本での運用やドローン等ロボット業界との関係性に迫っていきます。
洋上風力とは
「海洋上」の「風力発電」が、洋上風力発電(洋上風力)と呼ばれています。洋上=offshoreから、オフショア風力発電とも。ここでいう海洋上の定義は「水の上」であり、フィヨルドや港湾、大きな湖なども対象となります。
文字通り水上に風力発電を設置し、風を受けて発電します。一般的には基礎を陸地に固定して設置しますが、「浮体式洋上風力発電」という基礎部分を浮かせることで深い洋上でも設置できるようにしたものも実用化を目指して研究が進んでいます。
なぜ水上に風力発電を設置するのか
洋上は陸上より地形や建物の影響を受けづらいため大きな風力が得られ、安定した発電が可能となります。景観や騒音問題も飽和でき、立地確保もしやすいため大型風車が導入しやすいといったメリットがあります。
世界的に見た洋上風力の歴史と設置状況
デンマークが1991年に史上初めて建設し、現在はヨーロッパ全体で大規模に設置されています。
2015年ころまではほぼヨーロッパのみでしたが、近年は地球温暖化問題解消につながるとして関心が高まり、急速に成長しています。
世界的にみるとイギリスの総発電能力がずばぬけて高く、市場的には中国とアメリカでの成長が特に期待されています。
日本では2010年3月に茨城県で初めて港湾外へ設置され稼働しました。まだ本格導入はされておらず、国による実証事業になっています。
日本国内の洋上風力状況
日本政府は2020年12月に「洋上風力産業ビジョン」をまとめ、2040年までに原発30~45基分にあたる30~45ギガワットの導入を目指すという考えを打ち出しました。(2021年時点での洋上風力は0.4万キロワット)
「再エネ海域利用法」により最長30年間の海域占用が認められて事業環境が整ったことから、現在いくつかの計画が進行中です。
国の事業のためまだ大々的に報道されるようなことはありませんが、民間企業等も加わり、少しずつではあるものの着実に本格導入に向け動き出しています。
台風にも耐えられる大型洋上風力発電
日本は年間通して台風被害が大きいため他国に比べると設置難易度が高くなっていますが、2021年4月に米ゼネラル・エレクトリックが大型洋上風力発電機で初めてとなる、台風にも耐えられる性能を示す国際認証を取得したことが報道されました。
これにより日本が認証を取得し設置できるようになれば大量導入される可能性もあります。
現在計画中の国内洋上風力
実証が終了しているものも含め、導入地域は北海道から九州まで現在20カ所近くあります。
特に秋田、能代、青森周辺と山口、北九州、長崎周辺が多くみられます。
洋上風力とロボットの関わり
建設や設置後の点検に欠かせないのがロボットです。水上利用に適したものが使われるため、この分野の発展も期待できます。
特に水上の無人艇は安全性にも優れるため、点検作業には最適です。弊社で扱うようなROV(水中ドローン)も活躍できることでしょう。水中内の基礎部分を定期的に点検し、不具合等の早期発見も可能となります。
民間の無人潜水艇は基本的に人間が遠隔操作しますが、安全性やコスト面でのメリットが従来の方法よりも優れています。現在多くの国の機関がこういった無人艇を所有しており点検作業等に参加しつつ、開発がすすめられています。
ちなみに無人艇はあくまで点検等の作業であり、風車を組み立てるほどの力はありません。それにはそれ相応の大きな船が必要となります。以下で紹介する「ザラタン」がまさにそれです。
洋上風力建設に使われる「ザラタン」とは?
2021年4月には風車備え付けのための巨大自航式作業台船「ザラタン」号が日本で初めて秋田港に入港しました。秋田、能代両港湾域で計33基の大型風車を設置予定です。
洋上風力発電事業がチャーターしたザラタンは英シージャックス社系列のもので全長109m×幅41m。船体を貫通する全長約80mの4本の脚をたてたまま自航し、最大深度55mの海底に脚を立て、船体を海面に持ち上げて風車の備え付け作業を行います。
ちなみに「ザラタン」とは空想上の海亀(蟹)のこと。巨大で脚を持ち動く様がまさにぴったりの名前です。
日本での洋上風力事業はまだ始まったばかり。今後少しずつ話題になる機会も増え、その用語が身近に感じられる日もそう遠くないことでしょう。洋上風力とそれにかかわる事業の発展に期待しつつ、われわれも日々ロボットおよびドローン事業にいそしんでまいります。
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