本レポートでは、株式会社チックの石田がBlueROV2を操縦し、1kgから10kgまでのダンベルを搭載してテストした際の水中での操作感や動きをまとめています。
プールでは問題なく動作しても、実際の海では厳しいと感じるケースもありました。
これは、長年の経験や個人的な感覚に基づいた判断であることをご了承ください。
また、本実験ではスラスターのゲイン(パワー設定)を50%に設定して浮上できない場合、実用性が低いと見なす基準を設けています。
50%設定で浮上が難しくても、短時間の作業などは可能かもしれませんが、通常の業務運用としては困難だと判断しています。どうぞ参考までにご覧ください。
重要
実験概要
使用機体:BlueROV2 8スラスター仕様、ペイロードスキッド
搭載重量:1kgから10kgまで、1kg刻みでダンベルを追加(合計10パターン)。
検証する動き(各重量で共通)
- 前後左右移動
- 上下移動(浮上・潜水)
- 旋回(右回転・左回転)
- ピッチ動作(前方に頭を下げる・上げる)
ゲイン50%を基準とした理由
本機のスラスターは25%、50%、75%、100%の4段階で出力を切り替える設計ですが、メーカーでは100%での長時間運用は推奨されていません。
通常は最大75%を上限と考え、緊急時やどうしても必要な場合のみ短時間100%を使う想定です。また、安定的な作業を行う上では、基本を50%ゲインとした運用が目安となります。
そこで当社では、50%で浮上できない機体は実務使用には向かないと定義し、緻密な操作が必要な場合は25%、パワーが必要なときは75%、といった形で使い分けています。
追加実験
浮力材を「通常の2倍」搭載して同じ動作を試験。
検証ポイント
- 各動作が問題なく行えるか
- ゲイン50%で浮上可能か
実験結果
本実験ではBlueROV2に1kg~10kgの重りを搭載し、通常と2倍の浮力材で操作性を比較しました。
結果として、通常浮力材は4kgまでなら安定運用可能ですが、5kg以上で浮上が遅れる傾向が顕著に。
一方、浮力材を2倍にすると6kg程度まで安定操縦ができるものの、7kg以上では動きが重く実務運用は厳しいと判断されました。
これらはプール実験での結果であり、海での本格運用にはさらに余裕を見込む必要があります。
重量 | 通常浮力材 | 浮力材2倍 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
前後左右 | 浮上/潜水 | 旋回 | ピッチ | ゲイン50% 浮上可否 |
評価 | 前後左右 | 浮上/潜水 | 旋回 | ピッチ | ゲイン50% 浮上可否 |
評価 | |
1kg | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
2kg | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
3kg | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
4kg | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
5kg | 〇 | △ | 〇 | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
6kg | 〇 | △ | 〇 | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
7kg | 〇 | △ | 〇 | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 | △ | △ | ||
8kg | 〇 | × | 〇 | × | × | 〇 | 〇 | 〇 | × | 〇 | ||
9kg | △ | × | 〇 | × | × | 〇 | △ | 〇 | × | △ | ||
10kg | △ | × | △ | × | × | △ | × | △ | × | △ |
1kgの重りを搭載した場合
どの動作もスムーズに行え、操縦に不安はまったくありませんでした。重さによる制限もほとんど感じません。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
1 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2kgの重りを搭載した場合
前後左右・上下・旋回・ピッチ、どの操作も想定どおり動作し、全体的に安定して操作できました。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
2 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
3kgの重りを搭載した場合
各種操作に素直に応えてくれるため、安心して運用できるレベルでした。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
3 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
4kgの重りを搭載した場合
現場環境を考えても、大きな問題が起きる可能性は低いと思われます。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
4 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
5kgの重りを搭載した場合
プールでは操作が少し遅く感じるものの、作業自体は可能なレベル。海で使うとすると、このあたりが限界に近い印象です。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
5 | 〇 | △ | 〇 | △ |
6kgの重りを搭載した場合
動きは重たく感じ、スピードも遅めです。深さ維持モードはしっかり働きますが、実作業にはやや厳しい印象です。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
6 | 〇 | △ | 〇 | △ |
7kgの重りを搭載した場合
動かすこと自体は可能ですが、プール内での移動がやっとという印象で、業務的にはかなり厳しいです。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
7 | 〇 | △ | 〇 | △ |
8kgの重りを搭載した場合
一度浮上できれば操作は可能ですが、実務に使うには難しさを感じます。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
8 | 〇 | × | 〇 | × |
9kgの重りを搭載した場合
一度浮上すると操作はできますが、ゲイン75%以上が必要で、実用面では厳しいです。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
9 | △ | × | 〇 | × |
10kgの重りを搭載した場合
一度浮上できればわずかに動かせますが、プールでやっとのレベルで実用性は低いです。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
10 | △ | × | △ | × |
浮力材を2倍搭載したBlueROV2に変更
浮力材2倍10kgの重りを搭載した場合
一度浮上すれば動作は可能ですが、プールでもギリギリで、海では実用的ではありません。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
10 | △ | × | △ | × |
浮力材2倍9kgの重りを搭載した場合
動かすこと自体はできますが、ゲインを75%に上げないと安定した操作は難しく、海では厳しい印象です。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
9 | 〇 | △ | 〇 | × |
浮力材2倍8kgの重りを搭載した場合
ゲイン50%の状態でも各種動作が可能。比較的安定した制御ができます。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
8 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
浮力材2倍7kgの重りを搭載した場合
ゲイン50%でも業務に耐えうるレベルで各種動作が可能です。ピッチ操作は若干重さを感じますが、流れが強くなければ問題ないでしょう。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
7 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
浮力材2倍6kgの重りを搭載した場合
各操作を問題なく行えるうえ、ピッチ操作もそれほど負担を感じず、安定した操縦が可能です。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
6 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
浮力材2倍5kgの重りを搭載した場合
どの操作でも大きな負荷を感じず、終始スムーズに動かせました。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
5 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
浮力材2倍4kgの重りを搭載した場合
どのモーションもストレスなく制御でき、非常に良好な結果でした。4kg程度であれば問題なく浮力を確保できています。
総合評価:
重量 | 前後左右 | 浮上、潜水 | 旋回 | ピッチ動作 |
4 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
まとめ
本実験では、BlueROV2に1kgから10kgの重りを搭載し、通常の浮力材と2倍の浮力材を比較しました。
結果として、通常浮力材では4kgまで安定動作が可能でしたが、5kg以上になると浮上やピッチ操作に負荷がかかり厳しくなります。
一方、浮力材を2倍にした場合は6~7kg程度までは比較的安定し、8kg以上は動作が重くなる傾向が顕著でした。
いずれもプール実験での結果であり、海では潮流や波を考慮してさらに余裕を持つ必要があります。
総合的に、ゲイン50%で浮上できるかが実用面の目安となり、重量物搭載時には推進力や浮力のバランスに留意した安全な運用が重要です。