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水中ドローンBlueROV2の重量負荷実験レポート ~1kgから10kgまでダンベルを搭載してみた~

2019年6月26日

本レポートでは、株式会社チックの石田がBlueROV2を操縦し、1kgから10kgまでのダンベルを搭載してテストした際の水中での操作感や動きをまとめています。

プールでは問題なく動作しても、実際の海では厳しいと感じるケースもありました。

これは、長年の経験や個人的な感覚に基づいた判断であることをご了承ください。

また、本実験ではスラスターのゲイン(パワー設定)を50%に設定して浮上できない場合、実用性が低いと見なす基準を設けています。

50%設定で浮上が難しくても、短時間の作業などは可能かもしれませんが、通常の業務運用としては困難だと判断しています。どうぞ参考までにご覧ください。

重要


これは動作の実験であり、実際にBlueROV2に機材を搭載するときは浮力材を追加するなど浮力調整をして運用しましょう。

実験概要

使用機体:BlueROV2 8スラスター仕様ペイロードスキッド

搭載重量:1kgから10kgまで、1kg刻みでダンベルを追加(合計10パターン)。

検証する動き(各重量で共通)

  • 前後左右移動
  • 上下移動(浮上・潜水)
  • 旋回(右回転・左回転)
  • ピッチ動作(前方に頭を下げる・上げる)

ゲイン50%を基準とした理由

本機のスラスターは25%、50%、75%、100%の4段階で出力を切り替える設計ですが、メーカーでは100%での長時間運用は推奨されていません。

通常は最大75%を上限と考え、緊急時やどうしても必要な場合のみ短時間100%を使う想定です。また、安定的な作業を行う上では、基本を50%ゲインとした運用が目安となります。

そこで当社では、50%で浮上できない機体は実務使用には向かないと定義し、緻密な操作が必要な場合は25%、パワーが必要なときは75%、といった形で使い分けています。

追加実験

浮力材を「通常の2倍」搭載して同じ動作を試験。

検証ポイント

  • 各動作が問題なく行えるか
  • ゲイン50%で浮上可能か

実験結果

本実験ではBlueROV2に1kg~10kgの重りを搭載し、通常と2倍の浮力材で操作性を比較しました。

結果として、通常浮力材は4kgまでなら安定運用可能ですが、5kg以上で浮上が遅れる傾向が顕著に。

一方、浮力材を2倍にすると6kg程度まで安定操縦ができるものの、7kg以上では動きが重く実務運用は厳しいと判断されました。

これらはプール実験での結果であり、海での本格運用にはさらに余裕を見込む必要があります。

重量 通常浮力材 浮力材2倍
前後左右 浮上/潜水 旋回 ピッチ ゲイン50%
浮上可否
評価 前後左右 浮上/潜水 旋回 ピッチ ゲイン50%
浮上可否
評価
1kg
2kg
3kg
4kg
5kg
6kg
7kg
8kg × × × ×
9kg × × × ×
10kg × × × × ×

1kgの重りを搭載した場合

どの動作もスムーズに行え、操縦に不安はまったくありませんでした。重さによる制限もほとんど感じません。

ゲイン50%浮上可否:まったく問題なく操作可能。プールはもちろん、海でも十分対応可能だと思われます。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
1

 

2kgの重りを搭載した場合

前後左右・上下・旋回・ピッチ、どの操作も想定どおり動作し、全体的に安定して操作できました。

ゲイン50%浮上可否:特に問題なく浮上可能。この程度の重量なら、海の潮流にも十分耐えられそうです。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
2

3kgの重りを搭載した場合

各種操作に素直に応えてくれるため、安心して運用できるレベルでした。

ゲイン50%浮上可否:全く問題なく浮上可能。比較的軽めの負荷なので、海でも支障なく動かせると思われます。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
3

4kgの重りを搭載した場合

現場環境を考えても、大きな問題が起きる可能性は低いと思われます。

ゲイン50%浮上可否:問題なく浮上できます。実験中もどのモーションもストレスなく制御が可能でした。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
4

5kgの重りを搭載した場合

プールでは操作が少し遅く感じるものの、作業自体は可能なレベル。海で使うとすると、このあたりが限界に近い印象です。

ゲイン50%浮上可否:浮上が遅く重さを感じますが、動作自体はできます。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
5

6kgの重りを搭載した場合

動きは重たく感じ、スピードも遅めです。深さ維持モードはしっかり働きますが、実作業にはやや厳しい印象です。

ゲイン50%浮上可否:浮上は可能ですが、明らかに重さを感じます。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
6

7kgの重りを搭載した場合

動かすこと自体は可能ですが、プール内での移動がやっとという印象で、業務的にはかなり厳しいです。

ゲイン50%浮上可否:浮上は遅く、これ以上重いと難しいと感じます。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
7

8kgの重りを搭載した場合

一度浮上できれば操作は可能ですが、実務に使うには難しさを感じます。

ゲイン50%浮上可否:着底状態からは浮上できず。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
8 × ×

9kgの重りを搭載した場合

一度浮上すると操作はできますが、ゲイン75%以上が必要で、実用面では厳しいです。

ゲイン50%浮上可否:着底状態から浮上できず。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
9 × ×

10kgの重りを搭載した場合

一度浮上できればわずかに動かせますが、プールでやっとのレベルで実用性は低いです。

ゲイン50%浮上可否:着底状態からは浮上不可。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
10 × ×

浮力材を2倍搭載したBlueROV2に変更

浮力材2倍10kgの重りを搭載した場合

一度浮上すれば動作は可能ですが、プールでもギリギリで、海では実用的ではありません。

ゲイン50%浮上可否:着底状態からゆっくり浮上はできるものの、途中で停止することも。ゲイン75%でようやく安定浮上。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
10 × ×

浮力材2倍9kgの重りを搭載した場合

動かすこと自体はできますが、ゲインを75%に上げないと安定した操作は難しく、海では厳しい印象です。

ゲイン50%浮上可否:ゆっくり浮上可能だが、他の操作を加えると途中で浮上が止まります。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
9 ×

浮力材2倍8kgの重りを搭載した場合

ゲイン50%の状態でも各種動作が可能。比較的安定した制御ができます。

ゲイン50%浮上可否:ゆっくりですが浮上は可能です。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
8 ×

浮力材2倍7kgの重りを搭載した場合

ゲイン50%でも業務に耐えうるレベルで各種動作が可能です。ピッチ操作は若干重さを感じますが、流れが強くなければ問題ないでしょう。

ゲイン50%浮上可否:浮上がやや遅いものの、動かすことは可能です。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
7

浮力材2倍6kgの重りを搭載した場合

各操作を問題なく行えるうえ、ピッチ操作もそれほど負担を感じず、安定した操縦が可能です。

ゲイン50%浮上可否:特に問題なく浮上できます。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
6

浮力材2倍5kgの重りを搭載した場合

どの操作でも大きな負荷を感じず、終始スムーズに動かせました。

ゲイン50%浮上可否:問題なく浮上可能。海での本格運用でも不安なく操作できる範囲だと思われます。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
5

浮力材2倍4kgの重りを搭載した場合

どのモーションもストレスなく制御でき、非常に良好な結果でした。4kg程度であれば問題なく浮力を確保できています。

ゲイン50%浮上可否:問題なく浮上可能。多少の潮流変化があっても余裕を感じられました。

総合評価:

重量 前後左右 浮上、潜水 旋回 ピッチ動作
4

まとめ

本実験では、BlueROV2に1kgから10kgの重りを搭載し、通常の浮力材と2倍の浮力材を比較しました。

結果として、通常浮力材では4kgまで安定動作が可能でしたが、5kg以上になると浮上やピッチ操作に負荷がかかり厳しくなります。

一方、浮力材を2倍にした場合は6~7kg程度までは比較的安定し、8kg以上は動作が重くなる傾向が顕著でした。

いずれもプール実験での結果であり、海では潮流や波を考慮してさらに余裕を持つ必要があります。

総合的に、ゲイン50%で浮上できるかが実用面の目安となり、重量物搭載時には推進力や浮力のバランスに留意した安全な運用が重要です。

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石田一浩

石田一浩(Ishida Kazuhiro)

株式会社チックの代表として、水中ドローンや無人船、ブルーボートの開発・販売に注力。海洋調査や水中探査の現場で、水中ドローンを活用した豊富な調査経験を持ち、その実績を基に、専門家や企業に信頼される高性能な製品を提供しています。

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