魚が集まる「魚礁」を徹底解説!種類、機能、設置方法など

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魚が集まる「魚礁」を徹底解説!種類、機能、設置方法など

魚たちの大切な居場所として海になくてはならないもの、それが魚礁(漁礁)です。

釣りやダイビングをする人にとってはおなじみの存在ですが、意外と一般的には知られていないかもしれません。

当記事では、「そもそも魚礁とは?」という基本的なところから、魚礁の種類や機能などについて詳しく解説します。

魚礁とは

魚礁とは、岩などによって海底にできた隆起部で、魚が集まってくるところを指します。

自然にできたものを「天然魚礁」や「天然礁」と呼ぶのに対し、人工物を海底に沈めて人為的に造った魚礁を「人工魚礁」といいます。

天然魚礁

海底から突き出た岩山など、人の手を加えずに自然に形成された魚礁です。

人工魚礁

魚が好む環境を整備するため、あえて海底に人工物を沈めて造るのが人工魚礁。人工魚礁の材料には、コンクリートブロックや鋼製の構造物などを用いることが多いです。

魚礁に魚が集まる理由

魚礁に魚が集まる理由

魚礁には以下のような機能があることから、魚が集まってくると言われています。
・餌場……魚礁周辺には、フジツボやエビ、カニなどさまざまな餌生物が棲息します。
また、プランクトンも存在しやすいため、魚たちの良い餌場となります。
・休憩所……魚礁が流れを遮るため、泳ぎ疲れた魚の休憩所になります。
また、物陰に隠れる性質を持つ魚類の隠れ家としての機能も持ちます。
・逃避場……小さな魚が大きな魚に襲われたとき、逃げ込むための場所になります。
・産卵場……産卵に必要な海藻類が豊富なので、産卵に適しています。

この他にも、魚礁には音や陰影、流れの変化があり、それに魚が引きつけられるとも言われています。

音とは、魚礁周辺に棲息するフジツボやエビ、カニなどが出す音であったり、水の流れが魚礁にぶつかったときに出る音などです。

魚礁に集まる魚

魚礁に集まる魚種は100~200種類にもわたり、浮魚から底魚まで幅広く見られ、海域・水深・季節・成長段階によっても異なります。

魚礁に集まる魚の具体例

魚礁に体を接触させる……カサゴ、アイナメ
魚礁の近くを泳ぐ……マダイ、イシダイ
魚礁から離れた中層を群れで泳ぐ……ブリ、アジ、サバ
魚礁周辺の海底に集まる……ヒラメ、カレイ

魚礁の種類

魚礁に集まる魚

人工魚礁は、魚が好む環境を人工的に作り出すためのものなので、対象の魚や環境、期待する効果などによって必要な魚礁は異なります。そのため、形状や使用材料などさまざまな魚礁が存在します。

形状による違い

角型、丸型、円筒型、高層型など。

中でも角型(ブロック型)のものは、左右対称なので吊り上げ・下げ時に姿勢の乱れが少なく、また海底に沈めた後も安定していることからよく使用されます。

角のない丸型や円筒型の魚礁は網がかりが少なく、網漁業の妨げになりにくいのが魅力です。

高く積み上げた高層型の魚礁は、潮の流れを利用して栄養素を海底から海の上層へと供給するのに役立ちます。これにより魚たちの餌となるプランクトンが増加するので、魚の体重増加や生育環境の向上につながります。

使用材料による違い

コンクリート、鋼製、木材など。

ブロック型のものはコンクリート、高さが20mを超えるような大型の魚礁には鋼製部材が使われることが多いです。

増殖機能を付加するため、コンクリートと鋼製など複数の材料を組み合わせたハイブリッド型の魚礁も見られます。

また、近年国が進める循環型社会形成の一環として木材の利用を積極的に図るため、農林水産省では「農林水産省木材利用拡大行動計画」を策定し、魚礁への木材利用(木材活用礁)の動きを進めています。

水産庁がまとめた「魚礁・増殖礁への木材利用の手引き(平成27年3月)」によると、木材活用礁には「コンクリート礁や鋼製礁に比べて餌料生物が早期に発生する」などのメリットが確認されているようです。

参考

※https://www.jfa.maff.go.jp/j/gyoko_gyozyo/g_hourei/pdf/mokuzai.pdf

船の魚礁化について

日本の船は鋼船・木船・繊維強化プラスチック(FRP)船の3つに分けられますが、中でも小型船舶には圧倒的にFRP船が多いです。

しかもFRP船は他2つの船に比べてリサイクルが難しく、そのため放置艇などの問題が生じています。

そこで注目されているのが、FRP船の人工魚礁化です。

これには「船の使用履歴が明確化されていること」「海洋汚染を引き起こさないよう適切な前処理を行うこと」が前提となります。

水産庁の「FRP沈船魚礁化ガイドライン(平成26年)」によると、船の魚礁は従来のコンクリート製魚礁と比べて同等の魚礁効果を持つこと、油分などの溶出は認められなかったとされており、今後の動向が注目されそうです。

人工魚礁設置後の変化

人工魚礁設置後の変化

人工魚礁の設置から、設置後の魚礁周辺の環境の変化について解説します。

魚礁の設置

クレーンで魚礁を吊り下げ、海底に設置。

太陽光が十分届く浅い水域に設置することで、設置後1ヶ月ほどで魚礁表面に藻などが着生します。これらはアイゴ、メジナ、アワビなどの餌となる他、エビなど小型生物の棲息場、隠れ家となります。

生物の着生

魚礁設置後2~3ヶ月が経つと、表面にフジツボやコケムシなどが固着するようになります。

周辺水域の環境によってどんな動物がつくかは多少異なりますが、日毎に種類や量を増していき、お互いに場所の取り合いをするように。その上にまた新たな生物が固着・着生して、魚礁表面がどんどん複雑化していきます。

魚たちの棲息

海藻やフジツボなどの生物が着生し複雑化した魚礁には、エビやカニなどが棲息し始めます。

また、魚類の稚魚も潜入します。魚礁を住処、隠れ家としつつ、流れてくるプランクトンや固着動物などを餌として繁殖します。

周辺環境、生物の変化

魚礁周辺の土砂は流れによって移動を繰り返し、それによって砂に潜っていた貝などが露出、マダイやカレイなどの餌となります。

人工魚礁設置によって環境が変わり、それに応じてさまざまな生物が生育するようになるのです。

人工魚礁を設置することで餌が豊富になり、魚たちの生育状況が良くなり、またそれが良い循環を生む、というサイクルができあがります。

「浮魚礁」や「藻場礁」って?

「浮魚礁」や「藻場礁」って?

通常の魚礁とは少し違った、「浮魚礁」と「藻場礁」について解説します。

浮魚礁とは

上で紹介した魚礁とは違い、海面や海面下に浮くタイプの魚礁も存在します。

それが「浮魚礁」です。

これはカツオ・マグロ・ブリ・シイラなどの回遊性魚類が、海を漂流する流木などに集まる習性を利用したもの。

浮魚礁の利用が盛んなフィリピンでの呼称にならい、「パヤオ」と呼ばれることもあります。

浮魚礁は海底に沈める「おもり」、海面もしくは海面下に浮かぶ「浮力体」、双方を結ぶ「ロープ」で構成されるのが一般的です。

浮力体の周りに回遊魚が集まる他、設置後しばらくするとロープに藻などが付着し、魚たちの餌場としての機能も持ちます。

藻場礁

海の中で海藻が生い茂っている場所を「藻場」と呼びます。

藻場は水質の浄化や魚たちの住処など、自然界において重要な意味を持っていますが、近年、水質汚染などが原因で自然の藻場がどんどん減っているのが現状です。

「藻場礁」は、海藻類を増殖するための設備で、クロメなどを植え付けたコンクリートブロックを海中に沈めたものです。

「表面積が大きく海藻が着生しやすい」「ウニなどの食害を防止する機能がついている」などの特徴があります。

観光名所としても有名な魚礁の例

釣りや漁業のイメージが強い魚礁ですが、さまざまな魚たちが集まることからダイビングスポットとしても人気です。

三重県尾鷲市の魚礁

行野浦漁港から徒歩数分の場所には、大型回遊魚を誘い込むため、水深23mの海底にコンクリートブロックがいくつも積み上げられています。

その魚礁にはソフトコーラルがびっしり付着しており、なんとも幻想的な雰囲気。

イザリウオやウミウシ、ネンブツダイとアジの大群、コロダイやミノカサゴなどが見られる人気のダイビングスポットです。

安室島の魚礁

沖縄県座間味島近くの無人島、安室島。

この辺りの海底に、人が通れるくらいの大きな魚礁が設置されており、ナイトダイビングにも使われるポイントとして有名です。

チョウチョウウオ類やクマノミ、ヨスジフエダイの群れ、アカククリやタテジマキンチャクダイ、サザナミヤッコなど多くの生物が棲息しています。

周辺にはサンゴの群生が広範囲に広がっており、日常を忘れてゆっくりできるスポットとして人気のようです。

魚礁に今後期待されること

中国新聞の記事(2020年10月8日)によると、広島県大崎上島町で岸近くの海に魚礁を並べ、魚を誘い込む実証実験が行われているとのことです。

漁業に携わる人の高齢化や環境悪化による漁獲高の低迷を受け、沖合に出ず、岸辺からすぐの港内で本格的な漁ができないかという試み。

実験の結果、マダイやキジハタに加えアコウやオコゼなどの高級魚も含む計25匹が取れました。

こうした新しい取り組み含め、これまでに蓄積されてきた知識や技術を継承していくことが大切です。

国も自治体も民間企業も一丸となり、人工魚礁の新たな技術、活用方法を探っていくことが求められています。

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  • この記事を書いた人
石田一浩

石田一浩(Ishida Kazuhiro)

株式会社チックの代表として、水中ドローンや無人船、ブルーボートの開発・販売に注力。海洋調査や水中探査の現場で、水中ドローンを活用した豊富な調査経験を持ち、その実績を基に、専門家や企業に信頼される高性能な製品を提供しています。

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