水圧

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水中ドローンに関係深い水圧を解説

水圧とは、水の重さによる圧力のことです。物体は、空気中では空気から圧力(大気圧=ほぼ1気圧)を受けています。

同じように、水中で水から受ける圧力が水圧です。水圧は物体のあらゆる方向から、垂直に働く特性があります。

水圧と水深の関係

水圧は、物体にかかる水の重量によって生じる圧力のため、水深が深くなるほど水圧は大きくなります。
例えば、水深2mの地点でかかる水圧は、水深1mの2倍です。

また、水面からの深さが同じであれば、水圧はどの地点でも等しくなります。

水圧を求める一般的な計算式は次の通りです。

水圧(Pa) = 水深 × 水の密度 × 重力加速度(約9.8m/s²)

なお、水の密度は1000kg/㎥でほぼ一定のため、1辺が1mの水の立方体の質量は1000kgです。

重力加速度を9.8m/s²とすると、重さは9800Nとなります。立方体の底面にかかる力、すなわち水深1m地点の水圧は、9800Paです。

水圧と物体の表面積

水圧は基本的に水深で決まるため、物体の表面積とは関係がありません。

ただし、水圧は単位面積に対してかかる力なので、物体が受ける力は、水圧が同じであれば表面積が大きいほど小さくなります。

物体が水に接している面積にかかる水圧の合計を「全水圧」と呼びます。

水中でかかる水圧

水圧を身体に最も感じられるのは、水中に潜る時です。

水圧は水の深さに比例するので、深く潜れば潜るほど、身体には高い水圧がかかります。

潜水して耳が痛くなった経験がある人もいるのではないでしょうか。これも水圧が原因です。

水圧は、海水の場合、水深が10m深くなるごとに1気圧=1013.25hPaずつ上がります(真水の場合は10.3mごとに1気圧上昇)。
水面では大気圧の1気圧分がかかっているので、水深10m地点で物体にかかる水圧は1気圧+1気圧=2気圧分です。ここから10m深くなるごとに、1気圧ずつ加算されます。

なお、水圧が上昇する倍率は深いほど小さくなり、逆に浅いほど大きくなります。

急激な水圧変化による人体への影響(減圧症など)を防止する上で、重要な観点です。

水圧と浮力

浮力は、水中にある物体に働く上向きの力です。物体にかかる水圧は水深が深い地点ほど大きくなるので、同じ物体であっても水面・水底からの距離によって差が生じます。

こうした水圧の差によって生じるのが浮力です。浮力の大きさは、その物体が押しのけた水の重さと等しくなります(アルキメデスの原理)

水圧はあらゆる方向から働いているため、物体が水中にある時は、浮力は水深に関係なく一定です。

物体が浮くか、沈むかは、物体の質量(体積×密度)によって働く下向きの力と浮力のどちらが大きくなるかで決まり、水中で双方の力が釣り合う地点で物体は静止します。

身の回りの水圧

水圧の仕組みは、以下のような日常生活の様々な場面で使われています。

  • 最も身近なものは、水道水です。水を供給する地点からの高低差によってかかる水圧を利用しています。水が蛇口から勢いよく出てくるのも、上の階でも変わらずに水を利用できるのも、水圧のおかげです。
  • 飲み物を飲むストローも、水圧を利用しています。ストローを液体につけると、液体が空気に押されて上がってくるので、楽に飲み物を飲めるのです。
  • 最近では「ウォーターピック」と呼ばれる、水圧を利用した歯ブラシも一般的になりつつあります。タンクにためた水に高圧をかけて細かい水流を噴射し、歯の汚れを落とす仕組みです。
  • シャワーヘッドも、水圧を調節できるタイプが増えています。

深海の水圧に適応する生物

深海(水深200m以上)では、物体に極めて高い水圧が加わります。水深200mで物体にかかる水圧は20気圧(1cm²あたり約20kg)です。

人間など多くの生物にとっては過酷な環境ですが、深海に適応した生物も数多く存在します。

これらの生物が生きていけるのは、水圧と体内の圧力を同じにする仕組みを持ち合わせているからです。

多くの魚類は浮き袋を持ち、体内の気体を出し入れしながら調節することで、沈むことなく泳いでいます。

一方、深海魚の特徴は・・・

  • 代表的な深海魚の一つであるアンコウは、浮き袋を持っていません。海底の同じ場所で動かずに獲物を待つ生態のため、浮き袋を必要としない特殊な体に進化しました。
  • リュウグウノツカイも浮き袋を持たない深海魚の一つです。
  • ダイオウグソクムシのように、水圧から体を守るため、極めて硬い甲羅を持つ生物も存在します。
  • 古代魚として知られるシーラカンスは、気圧による膨らみが小さくなる油分で浮き袋を満たしています。脂肪などは骨や筋肉より軽く、気体に比べて圧力の変化が少ないためです。

他の多くの深海魚にも、同じような仕組みを持った種類が多く存在します。

ただ、こうした深海魚を捕獲し、地上に急に上げると、血液中に溶け込んだ気体が急激に膨張し、目玉や内蔵などが飛び出して死んでしまいます。

生きたまま捕獲するためには、長い時間をかけて引き上げるか、注射器を挿して気体を抜くなどの処置が必要です。

深海の水圧に耐える潜水技術(飽和潜水)

深海のように、高い水圧のかかる環境下で活動するための潜水技術もあります。

飽和潜水」と呼ばれるものです。海難事故の救難・捜索や、海底ケーブルの敷設等の作業で活用が進んでいます。

人体には、様々な気体が溶け込んでいます。大気圧よりも高い圧力がかかると、窒素などの気体(不活性ガス)が体内組織に多く溶け込み、人体に悪影響を及ぼします。

「窒素酔い」などと呼ばれるもので、レジャーでのダイビングでも注意が必要です。

逆に、深海から浮上すると身体にかかる水圧は減少しますが、急激な圧力の低下によって、今度は体内に溶け込んでいた気体が血管内に放出され、気泡となることがあります。

気泡は血管を傷つけたり、詰まらせたりする場合があり、生命にかかわる深刻な症状にもつながります。

「減圧症(潜水病)」と呼ばれるものです。ダイバーが酸素ボンベなどを背負って行う「空気潜水」での作業が可能な水深は最大で50m前後と言われています。

一方、体内に溶け込む気体の量は上限(飽和量)が決まっています。

潜水前に地上で加圧を行い、体内に飽和量の気体を溶け込ませておけば、深海に潜って高い水圧がかかったとしても、体内組織にそれ以上気体が溶け込むことはありません。

飽和潜水はこうした原理を利用し、潜水前後に加圧装置で人工的に圧力を調整し、人体への影響を最小化する技術です。

飽和潜水を使えば、理論上、水深700m程度まで潜って作業することが可能とされています。2008年には、海上自衛隊の飽和潜水士が、水深450mまで潜ることに成功しました。

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  • この記事を書いた人
石田一浩

石田一浩(Ishida Kazuhiro)

株式会社チックの代表として、水中ドローンや無人船、ブルーボートの開発・販売に注力。海洋調査や水中探査の現場で、水中ドローンを活用した豊富な調査経験を持ち、その実績を基に、専門家や企業に信頼される高性能な製品を提供しています。

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